イタリアではローマ市内で頻繁に地下鉄を利用した。オスティア・アンティカまで結構長距離だったが、地下鉄と同じ一律料金で行くことができた。ローマ、ナポリ間の高速鉄道フレッチャロッサにも乗ったし、ナポリからポンペイまでヴェスヴィオ周遊鉄道も利用した。帰国時にはまた、高速鉄道レオナルド・エクスプレスにも乗車した。
そこで意外に感じたことは、降車駅でチケットを確認するという日本では欠かせない行為が、ここイタリアでは行われていない、ということなのである。
ローマの地下鉄では、一駅乗っても、終点まで乗っても一律料金1.5ユーロだ。距離が長い高速鉄道では切符を持っているか確認する乗務員が回ってくるが、出口で切符を改められることはない。その代りに、ヴェスヴィオ周遊鉄道の列車の中で一度だけチケットの提示を求められたことがある。この時に有効な(打券機を通した)切符を持っていないと、高額の罰金を取られるというのがこの国のやり方のようなのだ。
考えてみれば、これは非常に合理的である。このやり方なら、駅の出口で有効な切符を持っていることの確認を行わないのであるから、そのために掛かる膨大なコストが不要になる。従量料金を管理するためのコストも不要となる。有効な切符を持たずに列車に乗ったことが判った場合は高額の罰金を科せられることによる抑止効果によって、キセル行為も抑制できる。
どれだけ厳格に管理しても、不正をしようとする客はいろいろと工夫をして不正をするのであるから、不正抑制のためのコストは適当に抑えるべきである。これを実現しているのがイタリアの鉄道なのだ。
コストを抑制できる分、チケットの価格も抑えられるから、遠距離と近距離と同額ということもあまり問題にならないのだろう。鉄道会社も手間が省け、乗客は安価に鉄道を利用することができる。チケット代が安く抑えられるから一駅だけ乗る時もあまり気にしないで地下鉄を利用することができるのではないだろうか。
これは乗客にとっても鉄道会社にとってもハッピーな非常に合理的なやり方だと思う。
日本で一駅で降りる人も30分列車に乗る人も同じ160円という料金設定をすることができないのは、何か間違った過剰サービスの結果、高コスト体質になってしまって、鉄道料金が高額となっているということなのではないだろうか。
日本で生活している分には、電車を利用する場合は一駅乗る場合と三駅乗る場合とでは料金が異なるのは当たり前である。しかし、考えてみてもらいたい。都内の地下鉄やJRをすべて一律料金とした場合、出口の自動改札機は不要となる。あれの設置費用や、メンテナンス料は、当然のことだが乗客の我々が鉄道料金として負担しているのだ。もしかしたら、東京の地下鉄料金をどこまで乗っても一律170円にできる。そんなことが可能な方法をイタリアでは当り前に導入しているのかも知れない。
そんなことを考えさせられたイタリア滞在であった。
2017年1月イタリア旅行へ
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