古代ローマ建築の最高傑作。五賢帝の一人ハドリアヌス帝が作らせた完全な形態の神殿。それがパンテオン(Pantheon)である。
ここは前回のイタリア旅行でも自由時間を利用して訪れたことがある場所だが、再び近くまで来たのならば立ち寄らない手はない。
現在見ることのできるパンテオンは、最初、マルクス・アグリッパが建立したが火災により焼失し、その後ハドリアヌス帝が再建したものである。正面ペディメント下部に刻まれた
M・ AGRIPPA・L・F・COS・TERTIVM・FECIT
の文字は「ルキウスの息子マルクス・アグリッパが、三度目の執政官の時に建造した」という意味だそうだが、これはアウグストゥスの腹心であり、最初にパンテオンを建立したアグリッパを顕彰してハドリアヌス帝がそう刻ませたということだ。
イタリアでは、ローマを訪れてパンテオンを見ないものは愚か者だというような諺(ことわざ)があるそうだが、建築の歴史の中で輝かしい1ページを飾るこの建物をみないのであれば愚かと言われても仕方がないのではないだろうか。
パンテオンはキリスト教会としても機能しており、その名は「Basilica Santa Maria ad Martyres」というらしい。「聖母マリアと殉教者の聖堂」とでもいう意味であろう。
この建物がキリスト教至上主義の中世を無事に生き延び、現在も整備された美しい姿を保っているのは、キリスト教の聖堂として利用されてきたからであろう。パンテオンは全ての神々を意味し、キリスト教が広まる前のローマの神々が祀られていたのである。
イタリア建国の父ヴィットーリオ・エマヌエーレ二世の墓所もここパンテオンに存在する。
ここパンテオンは正面外観や内部の美しさに誰しもが魅了されるだろう。しかし、その美しさに惑わされずに裏側に回れば、そこは紛れもなきローマ遺跡だったのである。
古代ローマのローマン・コンクリートは二千年近くが経過しても崩壊することなく現代でも利用可能である。一方で、現代建築で使われるコンクリートは、鉄筋を使用しているがゆえに最大でも百年程度しか利用できない。
建物の経済的価値を考えると、現代では建築物を60年以上使うことは稀であるから、百年もてば十分だということなのだろうが、現代の技術は古代ローマよりも本当に進んでいるのだろうか。
一般的なツアーでは、トレビの泉を訪れることはあっても、ここパンテオンまで足を延ばすことは少ないようだ。全く勿体ない話である。
この日のローマ散策はここまでとなった。この後、我々は地下鉄に乗るためにスペイン広場に向う。
2017年1月イタリア旅行へ
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